在宅医療と新型コロナウイルス感染症

最終更新日:2020年04月17日

猛威をふるっている新型コロナウイルス感染症に対して、在宅医療の現場はどのように対応していけば良いのか、極めて対応に苦慮する問題です。ここでは(1)居宅の患者、と(2)入所介護施設の患者にわけて検討してみます。

  • 居宅の患者

居宅の在宅医療の対象となるのは、外来通院治療ができず自宅で寝たきりでいる患者さん、生命維持のために医療機器を継続的に必要としている患者さんです。この状態にある患者さんが、発熱や咳が続いた場合、通常の外来通院患者のように胸部レ線撮影を行い、PCR検査を行うというスタンダードな対応は、事実上できません。いつもの誤嚥性肺炎のつもりで治療をはじめ、どうしても病院での入院治療を要する病態になった場合に搬送された病院で診断に至る、これが実情であると思います。大勢の患者が行き交う病院に搬送されていくこと事態に感染リスクがあり、病院受診に関しては「本人、家族とじっくり協議の上で決める」ことになるでしょう。そうであるならば、COVID-19の細胞内侵入を阻止する機能があるとみられている膵炎の治療に有効性があり、安全性が確認されている小野薬品の「フォイパン」の予防的服用を検討してみてはどうか、と考えます。以下に、東京大学での研究成果についてweb上で示されている文章をお示しします。

(参考:東京大学医科学研究所のサイト)

  1. 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因ウイルスSARS-CoV-2の感染の最初の段階であるウイルス外膜と、感染する細胞の細胞膜との融合を阻止することで、ウイルスの侵入過程を効率的に阻止する可能性がある薬剤としてナファモスタット(Nafamostat mesylate、商品名フサン)を同定した。
  2. 本年3月初めにドイツのグループはナファモスタットの類似の薬剤であるカモスタット(Camostat mesylate、商品名フォイパン)のSARS-CoV-2に対する有効性を発表したが(参考文献1)、カモスタットと比較してナファモスタットは10 分の1以下の低濃度でウイルスの侵入過程を阻止した。
  3. ナファモスタット、カモスタットともに急性膵炎などの治療薬剤として本邦で開発され、すでに国内で長年にわたって処方されてきた薬剤である。安全性については十分な臨床データが蓄積されており、速やかに臨床治験を行うことが可能である。
  • 入所介護施設の患者

先日千葉県の介護施設で集団発生した事例があり、すでに報道されていましたので、多くの方がご存知でしょう。対応方法については、2月18日の時点で、厚生労働省から「介護保険最新情報」の中で、「社会福祉施設等における利用者等に新型コロナウイルス感染症が発症した場合等の対応方について」で対応方法の手順が示されています。私が継続的に診療している3カ所の入所介護施設においては、出入りする医師の体温を測定し、マスク使用下に出入りが許されていますが、施設によっては施設の方針に基づいて、玄関先で職員と情報共有して定時処方を渡して、施設内に入らないままで終わる場合もあります。それでも、中で勤務している職員が「無症候性の新型コロナウイルス感染症」であれば、施設利用患者に感染が広がることも考えられます。認知症GHのように利用者が和気あいあいと生活していることで、病態の安定化がはかられている施設では、感染が広がれば問題は深刻なものになります。問題解決のためにはワクチン接種に期待されるのですが、ワクチンができるのは、どんなに早くても来年の秋以降です。また施設診療に対応している担当医が新型コロナウイルスに罹患して、現場を離れて療養した場合に、どの医師がバックアップをして入所患者の診療を継続するのか、今のうちに明らかにして用意する必要があると思います。共に現場を担う訪問看護ステーションも同様にバックアップ体制をどうするのか、検討を重ねています。このような緊急事態ですから、行政には「訪問看護指示書」がなくてもバックアップステーションが動けるようにするなど、制度の柔軟な運用ができるようにして頂きたいものです。せめて、衛生用品の供給だけでも迅速にお願いしたいですね