医療機関への偏見や差別

最終更新日:2020年08月25日

 皆さんは、咳をしたり、熱が出ていたりする人が近くにいたら、きっと嫌な顔をして、文句を言うか、離れていくことでしょう。今この時も医療関係者は、コロナ感染の恐怖の中で戦っています。医療関係者でも怖いのですから、県民の皆さんが怖いのは当然のことと思います。

 戦っている医療機関の医師や看護師や事務職員にも、子供、孫、親はいます。そして恋人もいます。その愛する人たちに、うつすかもしれないという恐怖の内で、医療職という使命の中で戦っています。そして自分の子供が、バイキンと言われ、いじめにあうかもしれないという、悲しみとも戦っています。

 現場で医療行為をした後、どんなに体を清潔にして、感染しないように心がけても、一抹の不安は残ります。今でも聞きます。『家に帰っても自分の子どもが感染しないか心配です』と。だから、窓ガラス越しに子どもと手を合わせただけで、そしておどけた姿を見せて子供が笑ってくれた喜び、また現場に戻っていく。スマホでは子供のなまの反応を確かめられないと医療者は語った。もちろん家族に会って、子供の顔を見て、一緒に温かい物を食べる医療者もいます。それでも『ぎゅっと抱きしめることはできなかった』という声が寄せられます。そういう医療従事者が実際にいるのです。本当に切実です。

 市中の診療所ならば、医師自身が罹ったら、当然一定期間休診にするばかりでなく、診療所のすべてのスタッフやその家族の心配もしなければなりません。そして、自分の家族そのものに危害が及ぶことになります。病院の中では重症の患者さんの治療を毎日繰り返し治療にあたり、家に帰っても人工呼吸器の音が耳から離れず、懸命にして立ち向かっている医師や看護師の人たちのことを想像してください。そんな恐怖といら立ちと、そしてストレスの毎日の中で生活しています。

 わかってください。知ってください。理解してください。感染が拡大すれば、誰もが感染者になります。そのとき、偏見や差別を受けたらどんな思いをするのか、一人ひとりが賢明に考えて、不確かな情報に惑わされて。人を決して傷つけないように、正しい情報に基づいた冷静な行動をするようにしてほしいのです。まして、地域の医療機関の活動が差別意識で妨げられるようなことは、決してあってはならないことでしょう。