新型コロナウィルスワクチン ファイザー社製「コミナテイ®」について

最終更新日:2021年03月17日
  • はじめに

 我が国においても、新型コロナウィルスワクチンの接種が開始されました。新型コロナウィルス感染症の蔓延を防止する切り札として期待される一方で、未知のワクチンに対する不安の声も聞かれます。

 新型コロナウィルスに対するワクチンはいろいろなものが開発されていますが、わが国で承認されたワクチンは今のところ ファイザー社製のワクチン「コミナテイ®」ひとつです。

 この項では現在医療従事者への接種が始まり、4月から高齢者への接種が予定されているファイザー社製のワクチン「コミナテイ®」の特性についてお話ししたいと思います。

  • 新型コロナウィルス感染症を予防するためのワクチンが必要なのはなぜですか?

 感染症にかかると体の中には病原体に対する抗体などが作られ、新たに外から侵入する病原体を攻撃する仕組みが作られます。この仕組みを「免疫」といいます。この免疫の仕組みを利用したのがワクチンです。ワクチンを接種することによって、あらかじめその病原体に対する免疫(抵抗力)を作ることができ、病気になりにくくすることができるのです。

 新型コロナウィルス感染症はかかると重症化しやすく、死に至ることもあります。幸いにして治っても、後遺症に苦しむ人が少なくありません。効果的な治療薬が見つかっていない現状では、ワクチンが新型コロナウィルス感染症に打ち勝つために、今は唯一の手段なのです。

 ウィルスは生体の中でしか生きていけません。多くの人がワクチンによって免疫力をつけることができれば、ウィルスは生きる場所を失って消えてゆきます。わが国のウィルスの蔓延状態を解消させるという社会的な役割もこのワクチンは持っているのです。

  • 新型コロナウィルスワクチンワクチン、「コミナテイ®」はどんなワクチンですか

 一般的なワクチン、たとえばインフルエンザワクチンはインフルエンザウィルスを継代培養して弱毒化したウィルス株をつくり、これを培養してワクチンを作ります。ウィルスを含むワクチンを接種すると、生体内でこのウィルスを抗原とする抗体が作られ、インフルエンザウィルスの感染を防御するという仕組みです。

 それに対し、ファイザー社の今回のワクチン「コミナテイ®」は合成されたmRNAを使います。コロナウィルスの表面を覆う膜の突起部分のタンパク(スパイクタンパク)を作るmRNA(メッセンジャーRNA)を接種すると、生体内でまずスパイクタンパクが作られ、次にこのスパイクタンパクを抗原として抗体が作られるという仕組みです。

 

 こうしてできた抗体がウィルスの侵入を防御する仕組みはこれまでのワクチンと同様です。侵入したウィルスに抗体がくっつき、抗体の付着したウィルスを標的としてリンパ球(T細胞)が攻撃し、ウィルスを死滅させます。

 mRNAはウィルスを培養する必要がなく、短時間で合成できます。1年にも満たない短期間でワクチンを作ることができたのもそのためです、ここ10数年で飛躍的に進歩した免疫学と遺伝子工学の賜物といえます。

 ただmRNAは非常に壊れやすいものです。マイナス75度という超低温で保存運搬しなければなりません。冷蔵や常温での運搬には不向きで、解凍後は短時間に使い切らねばなりません。インフルエンザワクチンのようにどこでも簡単に投与することができないのが欠点です。

 生体内に投与されたmRNAはおよそ9日ほどで分解されてしまいます。これにより いつまでも余分な抗体が作られ続けたりして起こる長期的な副反応を防ぐ効果があります。mRNAが壊れ易いことは利点でもあるのです。

  • RNAを体の中に入れて怖いことはありませんか

 このワクチンは、遺伝子組み換え技術とは関係ありません。遺伝子に悪影響を与えない。というのがこうしたタイプのワクチンを作るうえでの大原則です。もともとヒトの細胞の中にはたくさんのmRNAがありますが、これらが私たちの遺伝子の中に入り込んで、悪さをすることはありません。私たちの体にはこれらのmRNAが遺伝情報がしまってある「核」の中には入ってこれないようにする仕組みがあります。ですからmRNAワクチンは、基本的にヒトの遺伝子(染色体・DNA)がある細胞の核の中に入り込むことはないのです。また、RNAをDNAに変換したり、そのDNAを組み込んだりするための酵素もないため、ヒトの遺伝子に変化を起こすことはありません

 

  • 「コミナテイ®」の有効性はどのくらいあるのですか

 「コミナテイ®」は2回の接種を行います。1回目の接種を行い、その3週間後に同僚のワクチンを接種するのですが、治験の結果によれば、その予防効果は95%とされています。これは接種した人の95%が発症しないという事ではなく、接種し発症した人の数が摂取しないで発症した人の数より95%少なかったという意味です。

 ワクチンとしては非常に強い予防効果といえます。すでに各国で多くの人たちに接種が実施されていますが、発症を予防するだけでなく、発症した場合も重症化を予防できたという結果が報告されており、有効なワクチンであると言えます。