かながわコロナ通信
新型コロナウイルス感染症の現況と今後
昨年、首都圏を中心としたCOVID-19患者が急増し、GO-TOトラベル事業とともに地方にも急激に感染が広がり、全国的に医療提供体制がひっ迫し医療崩壊が現実視されるようになった。
このため、令和3年1月7日、2度目の緊急事態宣言が発出された。1月初旬から中旬に新規患者数はピークを迎え、幸いなことにその後は徐々に減少傾向となってきた。
≪神奈川県の状況≫
本県の状況としては、人口10万人あたりの療養者数はピーク時70人だったものが、1月31日現在34人、新規患者数も29.68人まで減少している。
またピーク時5000人を超えた在宅や宿泊療養施設の療養者は1月27日現在2250人と減少してきたが、入院医療は軽症・中等症、重傷者の入院数は高止まり(それぞれ806人、109人)している。そのため実際に利用できる病床(以下、「即応病床」)に対する利用率は未だ軽症・中等症82.6%、重症93.2%にも及んでいる。
年代別感染者数も20代から30代の若年者が減り、50代以上の中・高年者の患者が増加している。それとともに死亡者数も増加し、特に、70代、80代の死亡者が増加している。感染の状況を示すモニタリング指標は多くは未だステージⅣを示しており、政府は緊急事態宣言を、本県も含め10都府県で宣言をさらに1か月間延長することとなった。
入院ベッド数に目を移すと、即応病床数は神奈川モデル認定医療機関の方々のご努力や、診療報酬上の見直しもあり、徐々にではあるが増加してきている。またコロナ病床拡大を余儀なくされたため一般入院病床やコロナ以外の救急医療ベッドの縮小がなされている。不要不急の手術の延期も行われてきたが、改めて2月末までの延長が要請された。感染の第1波の時も入院医療のピークは新規患者数のピークより2週ぐらい遅れていたが、まだしばらく入院療養者数の高止まりは続きそうである。
重点医療機関の入院ベッドの不足の一因となっていたコロナの症状の回復した患者(※退院基準参照)を協力病院や介護施設へ転院や搬送(いわゆる下り搬送)の受け入れが難しく病床の回転不足が生じ、結果的に重点医療機関でコロナの対応病床不足が生じるという事態が起こっていたが、この度、神奈川県に「下り搬送調整」を支援するチームが作られた。専用アプリとして「Kintone(キントーン)を使い、病院間の調整や搬送調整を行い、ベッドの有効利用に活躍している。
また医療提供体制において重要なのはベッド数の問題だけでなく、医療スタッフの支援やサポートの問題もあるが、協力病院や他の医療施設の医師や看護師などの医療スタッフの協力により、重点医療機関などのコロナ専用病床を増加させている地域もある。また、県内で多数のクラスターが発生し問題となっている高齢者施設ではあるが、地元医師会が介入し患者管理やサポートを行い、夜間の搬送などを減らすことで、結果として2次救急施設や、重点医療機関の負担を軽減させる働きをしている地域もある。これらの事例から見ても、地元の医療機関や介護施設や医師会などが行政と緊密に連携することが重要であり、本会として二次医療圏における地域医療構想会議の開催を進めている。また、自宅療養中や入院待機中の同患者の急死が問題となっており、LINEアプリの導入や、酸素濃度を測定するパルスオキシメーターの導入が行われているが、医療や看護のサポート体制のために、地域医師会や訪問看護ステーション等の関与が重要となってくると考える。
≪今後について≫
感染力が強く重篤化もしやすいと言われる変異株の国内で流行や市中感染などの不安材料もあるが、COVID-19の出口戦略として期待されているのがワクチン接種である。ワクチン接種による60%以上の集団免疫の獲得が重要であるため、各都道府県や自治体で接種体制の構築が急がれている。EUのワクチン輸出規制などもありワクチン供給時期がやや不安定であり、高齢者などへの接種の遅れが心配されているが、第1陣となるファイザー製ワクチンはダイヤモンドプリンセス号からちょうど1年後の2月14日にも日本に到着、翌2月15日には薬事承認され順次先行接種として医療従事者への接種が開始される予定である。
ワクチン接種開始(V-DAY)からのCOVID-19への反撃が今まさに開始されようとしている。
※【退院基準】
① 発症日から10日間経過し、かつ、症状軽快後72時間経過した場合
② 発症日から10日間経過以前に症状軽快した場合に、症状軽快後24時間経過した後に核酸増幅法又は抗原定量検査の検査を行い、陰性が確認され、その検査の検体を採取した24時間以後に再度検体採取を行い、陰性が確認された場合