かながわコロナ通信
新型コロナウイルス感染症と向き合う
新型コロナウィルス感染症のパンデミックが、社会に大きな影響を及ぼしていることは間違いありませんが、今後、どのような経過を辿っていくかについては、今のところ予測することができません。コロナ感染症に対する経済面での影響は大きく、国は感染の抑制と経済活動の両立を迫られています。国民の生活を守るため、国は補正予算と第2次補正予算を合わせて、およそ90兆円の国債を発行し、給付や補助金にあてています。しかし、その多くは増税という形で、われわれに跳ね返ってくることは確実です。その使いみちについて、われわれは、冷静に注視していくことが必要です。
経済への影響は計り知れず、多方面に及んでおり、苦慮されている県民のかたがたも多いものと拝察いたします。その影響は、診療所や病院にも及んでいます。持病のある患者さんが、COVID-19感染を警戒するあまり、診療所や病院への受診を抑制しているのです。我々医師が、一番恐れていることは、慢性疾患に罹患している患者さんが、通院を途絶し、薬を自己判断で中断してしまうことです。薬を中断することにより、持病が悪化する可能性があります。また、COVID-19感染そのものが、持病を有している人ほど重症化する可能性があると言われています。患者さんはそれぞれ、見合った方法で薬を継続していただくことをお願いします。すでに、ご存じのように、厚労省は、電話やオンラインを用いた受診を再診だけではなく初診患者にも適用する、特例的な対応に踏み切っています。診療所を直接受診することに不安を感じる患者さんは、かかりつけ医と相談の上、無理のない方法を選択してください。
SARS-COV-2は人の細胞に侵入する際に、ACE2受容体という細胞表面に存在する酵素に結合することが知られています。最近、アンジオテンシン受容体拮抗薬 (ARB)やアンジオテンシン変換酵素阻害薬 (ACEI)という降圧剤を服用していると、COVID-19感染の罹患率や死亡率を増えるのではないかと言われています。その理由は、動物実験レベルではありますが、これらの薬剤はACE2受容体を増やすからです。一方、SARS-COV (SARS-COV2類似ウイルス)に感染したマウスを使った実験では、ARBが急性肺障害の増加を抑制し、肺炎に対する保護効果を認めたという報告もあり、一定の見解は得られていません。高血圧関係の各学会は、現段階では、ガイドラインに則った、これらの薬剤による治療の継続を推奨しています。ARBやACEIを服用中の患者さんは、引き続き、服用を継続していただくようお願いします。
病気にかかりたいと思う人はいません。しかし、病気にかかりたくないという思いが強くなると、それは不安やパニックへとつながっていきます。あるいは、すでに問題になっているように差別や偏見に結びついていきます。現在は、SNSの時代です。根拠のない情報や間違った情報が、瞬く間に拡散していきます。一番大事なことは、ひとりひとりが冷静になり、他者に対する思いやりや理解を忘れないことです。感染症に対する情報は、日々変化していきます。人の意見に流されることなく、可能な限り、データーをもとにした情報の取捨選択を行い、自分が出来ることに目を向けて実行していくことが大切であると思います。