諸外国から学ぶこと 徹底した「行動制限と隔離」を前提の「PCR検査」

最終更新日:2020年05月04日

 台湾の成功のカギは、制限と隔離そして増産です。2019年12月末に武漢で新型ウイルスの症例が発生したという情報を掴むやいなや、すぐに対策センターを設立しました。マスクなど防護具の生産を増強して、中国本土からの航空機の渡航を規制しました。さらに、感染者や濃厚接触者、海外帰国者の14日間の隔離を徹底するなどの措置をとり、被害を最小限に抑えたのです。

 また、IT技術を駆使してマスクの在庫状況などが確認できるシステムや、実名購入制度などを採り入れて買い占めを阻止し、マスクの過剰な買い占めを押さえました。

 韓国では2月に新興宗教の集会で集団感染が起こり一気に感染者が増えましたが、早期に隔離を前提とした検査体制を拡大して、感染の拡大を抑制しました。

 韓国の大量のPCR検査の多くが、ドライブスルー方式だと思われているが、事実は違います。韓国で最も多用された検査手法は、個別訪問検査方式でした。個別訪問検査は、症状が出た人の自宅や診察を受けている医療機関に訪問して、その場で検体を採取し検査する方法です。大邱市の場合、ピーク時に、6万8000件余りのPCR検査行われましたが、54%に当たる3万7000件が個別訪問検査方式によるものです。ドライブスルー方式の1万1000件をはるかにしのぐ3倍以上の検査数です。検査をする人は公衆保険医で徴兵制に基づいて、兵役の軍医や保健所職員ら2700人派遣されそれが10班に分かれて感染エリアの個別訪問検査を行いました。検査希望の人の費用は約16万ウォン(約1万4000円)ですが、感染の疑いのある個人(感染が確認された患者との接触がある人)は無料で受けられるようにしました。韓国は人口が日本の約2分の1であるほか、局地的なメガクラスターに対する徹底的な隔離を前提とした検査を行い封じ込めしました。韓国の人口は約5000万人ですが、5月3日時点でPCR検査を受けた方は約63万人ですから、約1%強ということになります。約63万人の検査を行い、約1万人の陽性者を発見し、約62万人の陰性者を見つけたことになります。

 具体的には、セキュリティーカメラの映像やクレジットカードの履歴、車や携帯電話のナビのデータまでも使用して感染者の位置情報を追跡し、行動履歴などを分単位で公開することで新たなクラスターの発生を阻止し、感染の封じ込めを図りました。そして伝染病危機の際には個人のプライバシーよりも社会の安全を優先するよう法律が改正されたのです。それでも感染患者を追跡するのが困難になると、よりマスメッセージングにその動きが移行します。韓国の携帯電話は居住地区で新規感染者が発見されるたびに緊急警報のバイブレーションが鳴ります。そして感染患者の時間ではなく分ごとの移動経路を表示する方法になりました。さらにどの電車やどのバスに乗ったか、そして何時にどこで乗り降りしたかを政府の公式ウェブサイトに掲載している表示するようにしました。そして感染患者と経路が交わったと思う人は検査センターに届け出るよう告知されるようになりました。ですから韓国はプライバシーよりも厳格な行動制限を選択したことにより、感染拡大阻止が成功したのです。

 シンガポールも、中国での症例が確認されたわずか3日後に対策を開始しました。外国人の入国制限や入国後の隔離措置も迅速かつ厳格に実施していました。また、当初は都市封鎖や外出制限をおこなわず、経済活動を維持してきました。3月下旬には、一時的に1日の新規感染者数は数十人に抑えられていたのです。しかし、感染拡大が続き方針変更を迫られ、4月7日から食料品やインフラ、物流など必要なサービスをのぞき、ほぼすべての企業とすべての学校を閉鎖し、外出も食料品の買い出しや運動などに制限されました。政府は当初マスク不足への警戒もあって、健康な人はマスクをする必要はないと説明していましたが、4月14日から、外出時のマスク着用が義務付けました。6歳までの子供を除き、着用しない場合は初犯で300シンガポールドル(日本円で約2万3000円)の罰金を科していました。さらに感染者に対してはスマートフォンの位置情報を使い感染経路や濃厚接触者を割り出し、監視カメラの映像を使い隔離措置をおこなって、感染拡大の防止策を講じてきました。

 しかし、4月16日には、再び感染者数が急増して。1日で感染者が2割増え、その時点で合計4427人になってしまいました。さらに4月23日には新たに1037人の感染を確認したと発表されました。1日の新規感染者は4日連続で1000人を超え、国内の累計の感染者数は1万1000人を突破したのです。実際に徹底的管理体制が行われたのは一般国民のみで、社会的立場が弱い出稼ぎ外国人労働者が住む地域では、感染が急速に拡大してしまいました。人口580万の給与水準が高いシンガポールでは、約140万人の外国人労働者が暮らしています。このうち低賃金の肉体労働と言われる建設業界では、約30万人が働いています。実際に郊外の宿舎にインドやバングラデシュなどの建設作業員は1部屋に10~20人暮らし、毎日トラックの荷台に乗り仕事場へ向かうのです。そのような方々には、マスク配布の対象にもならず、医療とは程遠い環境に置かれていました。そこに感染が拡大したのです。現在感染拡大抑制に向けたロックダウン(都市封鎖)措置を6月1日まで延長すると発表しました。シンガポールはこれまでは、新型コロナウイルスとの闘いで世界の模範と称賛されてきましたが、厳格な住民監視や隔離措置などの導入も、忘れ去られてきた社会的貧困層から感染の火種はくすぶり続けているようです。

 香港での新型コロナウイルス感染症は感染者ゼロの日が増え、陽性が確認された場合で1桁台です。4月28日現在、感染者1038人、死亡者4人、回復者787人と報告があります。現在感染者数は17日連続で1桁が続いています。

 そのような香港はどのような方策をとってきたのでしょうか。WHOが中国・武漢市における新型コロナウイルスによる肺炎の流行に関する声明を発表した1月9日に先駆けて、香港政府は市民に防疫対策の呼び掛けを始めました。1月7日に未知なるウイルスと対峙するための3原則として、「状況に応じた迅速な対応」「事態悪化を想定した準備」「情報開示と透明性に基づく取り組み」を表明しました。

 「情報開示」の徹底ぶりは目を見張るものがあります。1月下旬より連日、衛生署衛生防護センター(CHP)および医院管理局より、その日に発症が確認された感染者の特徴や属性、検疫や医療上の取り組み、域内感染の伝播状況などが報告されます。また、ウェブ上で公開されているCHPの報告は、疑似感染者を含めた全症例の年齢、性別、居住先、入院先、立寄り先、感染経緯、利用交通機関など開示されました。自宅検疫ではQRコード付のリストバンドが渡され、検疫用アプリをダウンロードしてQRコードと同期しGPSで監視されます。

 「状況に応じた迅速な対応」も、1月4日の時点で感染症への警戒レベルを3段階のうち中位である「厳重」とし、武漢からの直通便を含む中国本土から乗客が到着する西九龍高速鉄道駅と香港国際空港で到着者への体温計測の措置を本格化させ、1月24日には武漢からのフライトや高速鉄道の直通便の離発着を停止しました。旧正月初日にあたる翌25日には、感染症への警戒レベルを3段階中最上位となる「緊急」へ引き上げたのです。それにより、27日には湖北省全域からの入境制限を開始、翌28日には、中国本土からの入境制限を本格化させた。30日からは、中国本土との間の高速鉄道やフェリーの運行を停止し、出入境拠点の半数に相当する6拠点を閉鎖しました。現在は香港への出入境ポイントは3拠点です。さらに中国本土からの入境者に対する14日間の強制検疫措置を開始し、5月7日まで3カ月にわたり継続をするという徹底した水際防疫体制です。 しかしながら、中国本土との陸路物流は制限しておらず、トラック運転者や航空パイロットに対しての検疫はするものの、普通の強制検疫の対象から除外し、経済機能が維持されるようにしています。

 1月23日に香港で初めて新型コロナウイルスの感染者が確認されて以来、2月の初めまでの新規感染者数は湖北省や広東省からの症例が中心でしたが、それ以降は一時減少に転じたのですが、3月10日以降は欧米等からの症例が急増し始めました。3月16日から22日までの1週間で150人から318人と倍増し、その翌週の3月29日には642人へと増加しました。そのことで、3月25日からは香港居住者を除き、海外からの入境を2週間禁じる措置を開始しました。28日夜間からは人と人との距離を保つために、飲食店では1卓4名まで、かつ隣との間隔を1.5メートル以上離すこととし、スポーツジム・遊興施設・映画館等の営業は禁止し、29日午前0時からは職場等を除き公共の場における4名を超える集りを禁止しました。

 現在、香港への出入境ポイントは3カ所と限定し、検疫措置が強化されました。海外から航空機で香港国際空港に到着したすべての非香港居民の入境を禁止しています。中国本土,マカオ,台湾から入境する香港居民・非居民を問わず14日間の強制検疫の対象になります。入境者はいかなる人も空港近くに設置された検疫所で唾液を収集され、感染しているかどうかの検査を受けなければなりません。唾液の検査結果は3日以内に判明し、陽性であれば陽性の人だけ病院に入ることになります。現在、香港では新型コロナウイルス感染症をかなり抑制しています。

 このように、有効な対策を迅速に講じていたことが早期に感染拡大を落ちつかせた最大の理由なのです。新型コロナウイルスはヒトからヒトに感染するので、この感染を防ぐ一番の方法は、「接触」・「移動」をしないことです。感染者の軽症者には自然と抗体ができ、ウイルスがいなくなります。これを1か月間頑張れば、ウイルスはかなりなくなることになります。新型コロナウイルス感染症は発症時に強い感染力がありますが、通常6〜12日以内に抗体産生が始まると、すぐに体内でのウイルスの除去が始まります。原則は、症状が発生した時点から14日間の隔離です。

 ということは、無症状感染者がいても、2週間から3週間で体内からウイルスが除去されることになります。その期間、ヒトに移さなければ、ウイルスは減っていくことになります。ですから、有症状感染者は早期に検査して確定して隔離すればよいことになります。

 諸外国はPCR検査の実施と行動制限や隔離を徹底した管理体制との両輪で、新型コロナウイルスに対応したのです。どの国がどの様に新型コロナウイルスに対応したのかを詳細に知ることで克服の道筋が見えてきそうです。対応の一部をすべてというような表現で語り、国民受けをするコメントでその場しのぎをしているようでは本質を見失ってしまいます。

 この新型コロナウイルスへの対処法は、国民一人ひとりの並々ならぬ決心が必要です。