医療関係者への偏見や差別

最終更新日:2020年05月19日

 皆さんは、咳をしたり、熱が出ていたりする人が近くにいたら、きっと嫌な顔をして、文句を言うか、離れていくことでしょう。今この時も医療関係者は、コロナ感染の恐怖の中で戦っています。医療関係者でも怖いのですから、県民の皆さんが怖いのは当然のことと思います。

 戦っている医療機関の医師や看護師や事務職員にも、子供、孫、親はいます。そして恋人もいます。その愛する人たちに、うつすかもしれないという恐怖の内で、医療職という使命の中で戦っています。そして自分の子供が、バイキンと言われ、いじめにあうかもしれないという、悲しみとも戦っています。

 現場で医療行為をした後、どんなに体を清潔にして、感染しないように心がけても、一抹の不安は残ります。今でも聞きます。『家に帰っても自分の子どもが感染しないか心配です』と。だから、窓ガラス越しに子どもと手を合わせただけで、そしておどけた姿を見せて子供が笑ってくれた喜び、また現場に戻っていく。スマホでは子供のなまの反応を確かめられないと医療者は語った。もちろん家族に会って、子供の顔を見て、一緒に温かい物を食べる医療者もいます。それでも『ぎゅっと抱きしめることはできなかった』という声が寄せられます。そういう医療従事者が実際にいるのです。本当に切実です。

 市中の診療所ならば、医師自身が罹ったら、当然一定期間休診にするばかりでなく、診療所のすべてのスタッフやその家族の心配もしなければなりません。そして、自分の家族そのものに危害が及ぶことになります。病院の中では重症の患者さんの治療を毎日繰り返し治療にあたり、家に帰っても人工呼吸器の音が耳から離れず、懸命にして立ち向かっている医師や看護師の人たちのことを想像してください。そんな恐怖といら立ちと、そしてストレスの毎日の中で生活しています。

 クルーズ船や屋形船の関係者の入院先で偏見や差別など、いろいろなことが起こってきました。それでも皆さんの暖かい言葉をさまざまなところで目にすることで、励みになるという医療従事者は実際に多く存在し、皆さんに感謝の念を持っています。

 しかし残念ながら一部の人たちですが、まだまだ偏見や差別が存在してます。つい最近も以下のような言葉で、くじけそうになったと報告がありました。「近所のスーパーで買い物をしていたら、あんた本当に大丈夫なのか」と遠くから言われた。「飲食店で食事をした後、不快だからやめてほしい」と言われた。「こんな時期に陽性になるとは、職員にどういう教育をしているのか」と院内感染のことを非難された。家族が学童保育を断われた。病院から帰ろうとすると「どこに住んでいるんだ?近くじゃないだろうね」、別な人は「バス通勤だったのか?近所でばらまいていないのか?」と言われた。

 どうかわかってください。そして理解してください。感染が拡大すれば、誰もが感染者になります。そのとき、偏見や差別を受けたらどんな思いをするのか、一人ひとりが賢明に考えて、不確かな情報に惑わされて。人を決して傷つけないように、正しい情報に基づいた冷静な行動をするようにしてほしいのです。

 新型コロナウイルス感染症は、今まで出会ったことのないウイルスですから、正直怖いです。差別も、誹謗中傷も、不安をあおることも、みんな人間の恐怖心が生み出していることです。怖いことは感染の恐怖から、不安や不満が蓄積し、不当な差別や、不毛な対立が生まれてしまうことです。最も怖いのはコロナではなく、人間のこころです。少しでも、柔らかいこころを保ち続けたいと思います。