介護保険施設におけるコロナ対策

最終更新日:2020年04月20日

4月7日にようやく安倍首相から特別措置法に基づく緊急事態宣言が発令されました。県民の皆様におかれましては連日の新型コロナウイルス報道で心身ともにお疲れのこととお察しいたします。

私たち神奈川県医師会では全理事がそれぞれの担当分野について現状を県民の方々にお伝えする試みを始めました。このコーナーでは「介護保険施設におけるコロナ対策」というテーマでわかりやすく解説したいと思います。

介護保険関連といっても多岐にわたりますが、第1回目として高齢者介護施設(ショートステイを含む)と通所事業所について留意点や対策、また現時点での課題を取り上げてみました。

Ⅰ 高齢者介護施設における感染対策 ※日本環境感染学会より一部抜粋

介護施設に共通することは、重症化するリスクの高い高齢者が集団生活をしていることです。言い換えれば三密(密集、密閉、密接)の代表的なものといえるでしょう。だからといってこの三密を解消することは諸事情からも至難の業であるといえます。感染予防の基本は自分が感染しないことと、人に移さないことです。介護施設においてもこの法則はドンピシャ当てはまります。コロナウイルスを持ち込まないことに尽きるのです。その場合どこから持ち込まれるか?可能性としては以下の5つが考えられます。それぞれについて留意点や対策、課題について検討しましょう。

①施設スタッフ

②家族や面会者

③新規入居者

④医療スタッフ

⑤出入り業者

 

①施設スタッフ自身がカラオケや飲み会等で感染する、または家族・友人からもらう。コロナ感染者の8割は自覚症状がありません。しかし、人には移してしまうのです。

<対策>

職員の日々の健康管理は必須であり、怪しいと思ったらすぐ上司に相談・報告の上、自宅待機等の手段をとりましょう。

<課題>

介護施設はどこも人手不足であり、一人の欠員が他のスタッフの大きな負担になるため、つい我慢して出勤してしまうのです。

②家族や面会者

この方たちからの感染する割合はとても多いのです。

<対策>

原則面会は禁止にするべきです。同時に本人の外出も禁止です。必要物品等の受け渡しは施設スタッフを通して行ってください。

<課題>

熱心なご家族からのクレームに繋がることもありますが、窓越しの面会や動画等をお見せすることで納得してもらいましょう。

③新規入居者

潜伏期間での入居や無症状者の場合、現状ではチェックする手段がありません。

<対策>

なるべく新規受け入れは先延ばしにしましょう。入居した場合も可能であれば個室等に2週間程度隔離収容するようにしましょう。

<課題>

介護施設は経営基盤が弱いところは、入居制限は即経営悪化につながるのでリスクを承知でもつい無理をしがちです。

④医療スタッフ

訪問診療や訪問看護スタッフからの感染も無視できません。

<対策>

手指消毒やマスク等の現時点での可能な限りの準備は必須です。診察や処置は居室ではなく、なるべく別室で行うようにしましょう。

<課題>

防護服等の調達は、非常に困難です。ここが最大のネックです。また、予備室等の余裕がない介護施設も多いのです。

⑤出入り業者

a.理容・美容・マッサージ

b.給食材料、介護用品

<対策>

a.は不要不急のことが多く、当分は休止をすすめます。

b.はなるべく施設外での受け渡しがいいでしょう。

<課題>

業者側からサービス提供や契約解除を申し出ることもあります。

⑥その他

ショートステイが問題になりますが、原則的に新規ご利用者には待機してもらうのが無難です。定期的にショートステイされていて他の介護サービスの利用がない方に限って、ぎりぎりOKですがその場合でもできれば長期利用に切り替えをすすめてください。施設によっては医療機関との関りがないところもありますが、この際、連携することを是非ともご検討ください。その場合は地元医師会が相談に乗ってくれるはずです。

Ⅱ 通所事業所(デイケア・デイサービス)における感染対策

不特定多数の高齢者(複数の介護サービスを利用していることが多い)が日替わりで利用する通所系サービスは、感染リスクも高く細心の注意が必要です。入居施設以上に三密です!!通所系サービスでコロナ感染患者が発生した場合、クラスター(小規模集団発生)になる可能性はとても大きいのです。現実に自主休業をしている通所事業所も200ヶ所以上あるのです。

<対策>

三密の解消はもちろんのこと、換気(1時間に10分程度)、加湿、環境器材消毒の徹底です。また、送迎ドライバーを含めたスタッフの日々の健康管理も欠かせません。万が一ご利用者やスタッフに感染が判明した場合には、即、神奈川県と所轄保健所に連絡の上で施設は一時閉鎖となります。その場合、それぞれの利用者の担当ケアマネジャー、介護事業所への連絡は同時進行となり事業所枠を超えた連携が必要となります。

<課題>

ご利用者自身、ご家族にとっても通所サービス利用のメリットはとても大きく、一時閉鎖になった場合の代替介護サービスへの振替は大変な作業となります。

 

まとめ

超高齢社会において介護入所施設と通所サービスの存在意義はとても大きいのですが、前者においては新型コロナ患者の施設内集団(メガクラスター)発生、後者においてはクラスター源となる危険とは背中合わせです。

新型コロナ感染者の病床不足が叫ばれる中、集団発生したとしても全員の感染者が入院できるわけではありません。医療介護現場は慢性的な人材不足に加えて、防護服や消毒液等の必要物品も十分な供給のない中で頑張っています。高齢者の生活を最前線で支える介護系施設とそこで働く介護スタッフにとって、何より悲しいのは風評被害です。県民の皆様の暖かいお言葉が何よりの励みになります。何卒ご理解の上、ともにこの困難を乗り切りましょう。